第6回 もうひとつに戦争展TOP

塚本三郎元衆議院議員講演会

 WiLL編集長、花田氏の講演に引き続き、元衆議院議員塚本三郎先生より、講演をいただいた。
塚本先生いわく、
―「もうひとつの戦争展」の協力要請を受け、交換条件として「話をさせていただく」ということで急遽、図々しくも壇上に立たせて
もらった― ということだが、地元愛知県で保守運動をする者にとって塚本先生は、比較的身近な存在であるが、全国的に考え
れば、まこと光栄なことである。
本日メインの講演者である花田氏が、目の前で聞く生の『塚本節』に一生懸命、メモをとっていたのが印象的であった。

 とはいえ、確かに急であったため正式なチラシも準備が出来なかったが、今回の講演は題して「敗者の大和魂・勝者の覇権」
というもの。 敗者の大和魂?どういうことだろう、とスタッフも首を傾げたが、聞けば「確かに」と理解できた。

 日本には、大和魂という精神がある。乃木大将は、自分の子供を失いながらも難攻不落と呼ばれた旅順を陥落し日露戦争を
勝利に導いた。これ以降、乃木大将の武士道精神は数多くあるが、この日は、旅順で戦った、ロシア軍のステッセル将軍が、
軍法会議にかけられ死刑宣告、そして禁固刑(減刑には乃木大将の助命運動が最大の理由とされている)釈放後、軍を追放さ
れ、静かな余生を送ったが、乃木大将は、彼に生活費を送ったという。敵に我が子を殺されようと、それは国家に奉げた命であり
そのために奉公できたとし、武士道には、恨み言はないということだろう。
 一方、乃木大将は、戦勝したものの、敵と同数の死者を出したことの責任から切腹をしようと決意したところ、明治大帝より、自
身の目の黒い内は認めぬという勅旨から、明治天皇大葬の夕にて殉死した。
 日本は、米国にとっても大敵であるロシアをやっつけ、第一次大戦でも大敵ドイツをアジアから駆逐した、いわば同盟国である
しかし、米国は支那での権益は無かった。そこで日本が獲得した南満州鉄道の権利を買おうとしたが、日本は応じることは無く
米国は、支那の蒋介石へ援助をして日本と戦わせる画策を講じ始めた。 第一次大戦終了後、石原莞爾や北一輝は、米国との
関係悪化を懸念する声があった。石原は、支那に対して蒋政権を助け、日本の命運を満州に注ぎ込むことを論じた。しかし、共
産国家となったスターリンと中共の毛沢東による謀略で、満州を支配する張作霖を爆殺し、日本の仕業として張学良を抗日へと
向かわせ、蒋介石に対し、共通の敵を日本とし国共停戦を行い、日本は、蒋介石と全面的に戦う羽目となった。

 戦後、日本の政治家が、毛沢東と会見したが、彼は「日本が蒋介石と戦ってくれたから今日がある」と語ったそうだ。
 一方、ヨーロッパでは、ドイツと英仏との間で戦争が起こり、仏が敗れていよいよ、英も危なくなってきた。米はモンロー主義の
もと、参戦する気運少なく、参戦する理由づくりとして、ドイツと同盟関係にある日本にいかに先制の一打を撃たせるかが、政策
となる。日本は、外交交渉するも、はじめから和平を考えない米国は挑発を続け、ついに戦争となる。当時の米国の姿勢は、武
力を持たないモナコ公国とて宣戦布告するだろうといわれるものであった。
 事実、戦後マッカーサーは、「日本は自衛戦争だった」と発言している。


 日本は、ドイツのユダヤ人政策には毅然とした態度をとっていた。戦前、ヒトラーを恐れた各国は、ユダヤ人に対する
入国査証発給に制限をかけたが(日本軍が管理する上海の租界は世界で唯一ビザなしで入れた)満州でユダヤ人を
受け入れた。このことに同盟国であるドイツから猛烈な抗議があったが、東條英機は、「満州国のような独立主権国家
の領域内での決定にドイツが干渉することは許されない。日本はドイツの属国でもなければ満州国も日本の属国では
ない」と一蹴、そのまま外務省からドイツへ伝えられた。
 大東亜戦争は、今まで白人に搾取されてきたアジア諸国が次々と独立した。日本は、敗戦したことにより、いろいろな
言い掛りをつけられるが、そこが大和魂なのだろう。「決して言い訳はせぬ」という精神であったが、勝者には、その美徳
は通用しない。 崇高な大和魂も政治的には果たしてどうだったのであろうか。今日の反日政策をみるとそれが、良かっ
たことであったのだろうか、考える必要もある。
 世界一の軍事大国であったロシアと戦って勝利を得た日露戦争以来百余年。その歴史は日本人のみならず、全世界
の有色人種にとっても大きな希望を与えた大勝利であった。この勝利の前には、明治政府の必死の国防体制充実と、
日英同盟による強固な支援、及び米国の好意的協力、そしてロシア後方撹乱の大戦略等々、陰の努力があった。
 果たして今日の日本政府は、その防衛体制在りや。また開戦前に、金子賢太郎をアメリカに派遣し、高橋是清をロンド
ンへ、そして明石元二郎を北欧に潜行せしめた情報戦を考えたことがあるのか。
 しかし、因果は巡る。ロシア撹乱のため支援したのが、あのレーニンである。その後、日本はその共産国ソ連に苦しめ
られることになろうとは。