日本政治経済研究所(保守有志による構成、会長:森 藤左エ門氏)が行う勉強会の内、一部が一般向けに公開されている。 15回目を迎える今回は、中西輝政京都大学教授をお招きし、先の参議院選挙を踏まえ、今後の進むべき道をお話いただいた。
プロフィール 1947年、大阪府生まれ。 京都大学法学部卒業後、同大学大学院修士課程(国際政治額専攻)修了。 英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院(国際関係史専攻)修了。 米国スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学国際関係学部教授など を経て、1995年より、京都大学総合人間学部教授(京都大学大学院・人間 環境学研究科教授を兼任)。 受賞は、1997年毎日出版文化賞、山本七平賞など。 最近の主な著書に、「日本人としてこれだけは知っておきたいこと」(PHP) 「日本の『敵』」(文芸春秋)「いま本当の危機が始まった」(集英社)など。
「先の参院選で選挙で安倍政権が大敗した。確かに議席を減らしたが、私は、これで『曖昧政治』と決別できる好いきっかけとなった」 とはじめに答えを述べた中西教授。その答えにいたる理由とは・・・。 曖昧とは、安倍首相は靖国への参拝を否定していない。否定していないから、行くことを意味しているとも取れる。米国は、対中政策 で台湾について曖昧な態度をとっている。しかし本当に台湾に有事があれば守るであろう。そうでなければ、信頼を失いどの国も米国と の同盟をしなくなる。「曖昧」な態度はひとつの政治手法ではある。しかし、核となるところが曖昧であってはならない。この度での参 院選は、マスコミの異常なまでの反安倍運動が展開された。はじめは朝日が、違和感を憶えるような展開をしていたが、次第に読売系・ 講談社系など一見保守と思われるところまで反安倍運動を展開し特別朝日が目立たないくらいに広がった。個人的には、大学で少し遅れ て昼食に行くため席を外したら「これから総理と会合ですか?」と言われるくらいマスコミは、私を安倍ブレーンとしてのイメージを浸 透させた。それだけ安倍政権を恐れるのは「戦後レジームからの脱却」にあるわけで、これが実現したら共産党は封じ込められるからだ 。共産党とは、目に見える政党だけを指すのではない。これは氷山の一角で中には、「自分は全く共産党とは関係ない」と思いながら、 やってることが共産党と同じことをしていることに気付いていない者もいる。政党とは違う共産主義者を数えれば、共産党員の二倍三倍 にも膨れ上がる。そういった者達が、朝日の呼びかけで大同団結していった。かつて「椿事件」があったが、今回は終盤になり朝日は他 紙よりも慎重であったようにも伺える。今回の暫定的勝者は朝日だったとも言える。しかし、世論調査などは、ある意味、どのようにで も出来るもの。少しフレーズを変えるなどすることで支持率の操作は可能である。歴史的には、第二次世界大戦でルーズベルトは参戦し たいが世論は圧倒的に参戦を望んでいなかった。そこで活躍したのが英諜報部である。独と同盟関係にある日本を挑発し、数字を操作し て世論をひっくり返すことに成功したことが、後の公文書で明らかになった。 このように情報操作はどうにでもなるもので第一次安倍政権の閣僚は、もっと堂々とすることが出来ればよかったが、そこまでの場数 を踏んでいなかったためか、このような数字に過敏に反応した。しかし、このような情報戦で受身であってはいけない。メディアを支配 下におく戦略を持たねばならない。これができる人物がいない。政策新人類と呼ばれる議員がいるが、彼らは、政策についてテレビなど で話をするのが上手いからいかにも優秀にみえるが、事務的な政策は優秀な官僚の方が上手で、政治家は、国民から信任された権威で官 僚を押さえ込む腕っ節の方が必要で政治家の政策は、国の方向を決めることである。 私がテレビでインド洋での給油の必要性を言ったところ、その局に物凄い数の抗議があった。しかしそれはどれもとってつけたような 同じフレーズで、組織化された背景があることが伺える。マスコミはことの他、抗議に弱い。そこで私の出演は少なくなるが、定年が近 いからそれも良いが、保守も黙っていないで行動することでマスコミを押さえることは可能である。 年金については、前の選挙では「年金未納問題」が発覚。そして今回も年金問題が浮上。選挙が近づくと、年金問題が出てくる。かつ て、国労がストライキを行っていたとき、政治闘争であることを明言した。交通を麻痺させることで社会を混乱させ政権に打撃を与える というもので本来なら、国家反逆罪に値することを堂々と言ってのけた。 年金が、コンピュータ管理に移行するときに名前入力をするにあたり読みが何通りかある名前は確認して入力する必要がある。それを ひとつの読み方だけで入力した場合、本当は別の読み方をする人が、申請をしてもその人のデータは出てこない。これを意図的に行えば 社会の大混乱を引き起こすことが可能である。混乱が起きれば、そのときの政権に打撃を与えることが可能で今まで、小出しにしてきた のが、今回は予想以上の影響を与えた。小泉前首相が靖国参拝の可能性が、近づいてきたとき、いわゆる「富田メモ」が登場した。当初 は、参拝阻止の手段と思われたが、未だにこれらの動きが続いており、単にそれだけが目的とは思えない状況にあるようだ。
小沢民主党代表は、選挙で負ければ政界を引退するといっていたが、これは本心であっ ただろうと推測する。 民主党は、前原誠司のような右側から中途半端な管・鳩山、そして左側で存在感が最も少 ない旧社会党が混在する政党だが、小沢は、その最も左側に近づいていった。今回の地方 で影響があったのは、農家ではなく日教組、そして社会保険庁や自治労などの旧社会党の 影響下にある連中である。数々の選挙を経験しただけあるが、小沢は一見、保守を思わせ るが、闇の部分を持つ人物でもある。
日本は、バブル崩壊、不良債権で経済力を失い、土井たか子の「山が動いた」で象徴されるような政治の混迷があり、力を削がれ、ユ ーロなどに遅れをとった。しかし、米国や中国などバブル以上の伸びをしているが、これをコントロールする政治力を持っている。これ をいかに上手く萎ませるかが政治力である。中国は、北京オリンピック以降、何らかの方法で膨らむ経済を軟着陸させようとするであろ う。その方法が、国民に目を外へ向けさせることもありうる。 安倍総理は、保護観察総理というのか、本人がいっていることと違うことを側近が言っている。政権の中で、彼を支援しない動きがあ る。しかし、ここで立ち返らなければならないのは、自民党という保守合同がどうして行われたか?それは、占領憲法の排除である。あ のときに保守合同がなければ日本はもっと悪い国になっていたと思う。その自民党の本来の役割に立ち返らなければならない。安倍政権 は、戦後、初めて教育基本法を改正した。防衛庁から防衛省となった。これは、祖父岸信介にもあった構想だが、実現困難と判断し日米 安保改定へ転換した。それをやってのけたのである。 先の選挙で曖昧政治との決別ができ、真の保守連合の新しい門出となることで、安倍政権にやっていただきたいのは、10月20日までに は、靖国神社へ参拝をして欲しい。その頃、もしくは年末までに訪中があるそうだが、それに気兼ねするようなら見込み違いであったと 支持を失うことになろう。そして集団的自衛権。日米同盟である以上、インド洋での給油は、日本海の防衛である。イラクで危険なめに あいながらも空輸を続ける自衛隊もそれで日本の安全が保障されることで任務を遂行している。集団的自衛権が実現できたら、安倍総理 には最高の賞賛を得るだろう。私が見込んだ通りの男であったと、私も安心して定年を迎えられる。
←椅子を置く場所が無いくらいの入りであった。
中西教授へ御礼を述べる→
椛島日本会議事務総長
追記 今回のリポートは、話の前後の仕方や90分講演にしては幅が広く、とにかくまとめることが難しい。己のレベルを痛感した。 出席者一同、理解し感動した。中西教授は、教育基本法改定の具体的な内容表記など的確な指導をされてきた。それだけ保守派の間で信任 が厚いのは確かである。中西教授は、京都大学という環境の中で学生の意識が確実に変わってきている手応えを実感していることが彼の著 書からも伺える。確かに世論も憲法改正への意識は数年前から随分と変わった。しかし、だからといって、安倍総理が提唱する「戦後レジ ームからの脱却」にそれだけの理解者がいるかというと懐疑的である。それは「戦後レジームの脱却」が年金やバンソウ膏程度の煙幕で掻 き消されたことで立証されたのではないだろうか。では、この講演を聴いた私達はどうするべきであろうか?体をどう動かすべきか?「戦 後レジーム」の意味を知らない人へ浸透させることであろう。自分の周りにまだ話していない人が沢山いる。その人たちへの声掛けがすぐ できることであろう。